独自開発の「伸びにくくコシが強い」冷凍麺で、国内外に需要が拡大する冷凍ラーメン。お湯がいらないラーメンキッチンカーから始まり、3年で売上は5倍に成長

東京都内でラーメン店を経営する萬来軒は、冷凍技術を活用した革新的なアプローチを進めています。冷凍することで伸びにくくなる冷凍麺の開発に成功し、キッチンカーや社員食堂の出店を展開。冷凍麺事業はわずか3年で売上が5倍に成長しました。新店舗の開業や海外輸出を視野に入れ、冷凍麺を軸に新たな市場を切り拓こうとしている萬来軒の挑戦についてご紹介します。
基本情報
- 会社名:株式会社 萬来軒
- 都道府県:東京都
- 業種:飲食業
- 凍結品目:ラーメン
- 品質面での課題:従来の冷凍技術ではスープや麺の味や食感が劣化してしまう
- ビジネス面での課題:長時間労働とコロナ禍の販路確保が課題になっていた
- 導入機種:アートロックフリーザー
導入背景:長時間労働の解消と新しい収益源の開拓のために冷凍機を導入
萬来軒がアートロックフリーザーを導入したのは約3年前。コロナ禍で営業が不安定な状況が続き、持続可能な事業モデルを模索せざるを得ない状況だったことと、以前から抱えてた業界特有の長時間労働の課題を解消することが目的でした。ラーメン店の仕事は朝から晩まで続き、労働時間が極端に長くなりがちです。これを改善する策として、セントラルキッチンでスープを一括生産し、冷凍保存することで労働負担を軽減する方法を検討。しかし、従来の冷凍技術では味の劣化が避けられず、高品質な冷凍ができる機械を探していました。そんなときに出会ったのが、デイブレイク社のアートロックフリーザー。真空処理なしで冷凍でき、味の劣化が一切なかったことが導入の決め手でした。
導入後に始めた冷凍ビジネス:冷凍麺の活用で「お湯がいらない」ラーメンキッチンカーが誕生
コロナ禍で飲食店が新たな収益源を求める中、萬来軒もキッチンカー事業に乗り出そうとしましたが、ラーメンを移動販売するには大きな課題がありました。キッチンカーには持ち運べる水の量に制限があり、200リットル以上の水を運ぶことができず、使用した水を捨てる場所もありません。そこで、お湯で麺を茹でるのではなく、スープと一緒に冷凍麺を煮込んでみたらどうかと考えたんです。試してみると、驚くほど美味しく仕上がりました。これを機に、お湯を使わずにラーメンを提供できるキッチンカーが誕生。イベントや屋外販売での可能性が大きく広がりました。

キッチンカーはサンドイッチやお弁当が主流なので、「ラーメンのキッチンカーがあるんだ!」と、特に大規模イベントで喜ばれることが多いです。作り方は、スープは液体のまま持参し、鍋で温めたスープの中に冷凍麺を直接入れて煮込むというシンプルな調理方法。ラーメン1杯のスープ量は約200ccなので、100人分を用意しても約20リットルと、それほど多くの水を必要としません。手鍋でスープを沸かせば、そこに冷凍麺を入れて30秒で完成。短時間で提供できるラーメンに、お客様も驚かれます。
冷凍ビジネスの発展:麺がとにかく美味しくて提供が圧倒的に早い!社員食堂で大反響
冷凍麺のラーメンキッチンカーは、偶然の出会いから大手アパレル企業の社員食堂にも進出することになりました。何回か出店を重ねたときに、社員食堂のレストランの統括部長から声がかかり、備え付けのキッチンがある上層階での出店を提案されました。そこは有名飲食企業が出店するフロアで、冷凍・冷蔵設備が完備されています。ランチだけで毎日200〜300食が提供し、調理のスピードが圧倒的に早いと好評でした。実際のオペレーションはキッチンカーと同様に、温めたスープに冷凍麺を入れるだけのシンプルなもの。しかし、社員食堂には備え付けの茹で麺器があり、冷凍麺を温める時間がわずか15秒とさらに短縮され、提供スピードは一段と向上しました。

品質への評価:冷凍冷凍することで5分経っても伸びにくく、コシが強くなる。冷凍技術と独自の配合で開発した萬来軒の冷凍麺
また、アートロックフリーザーで冷凍加工した萬来軒の冷凍麺は、通常の麺よりも伸びにくくなり、コシが増すという特性があります。通常ならスープに入れた瞬間から伸び始めますが、5分経っても変わらず、15分経ってようやくふやける程度です。麺には5種以上の粉使用しており、冷凍麺は冷凍耐性を考慮した配合に調整しています。アートロックフリーザーの性能と配合の工夫を掛け合わせた「伸びにくくコシが増す冷凍麺」。試行錯誤の末にたどり着いたレシピです。
この特性が評価され、居酒屋の鍋料理の〆として冷凍麺を卸す機会が増えています。麺が伸びず硬すぎないので、〆料理にはちょうどいい。また、大手企業さんから月に2万食の冷凍麺を作ってほしいという依頼があり、今年1月から製造を開始しました。

今後の展望:狭小スペース店舗での冷凍麺活用モデルの構築や海外展開を視野に、冷凍ラーメンビジネスの今後に期待
萬来軒の冷凍麺事業の売上は3年前と比べて約5倍に増加しました。しかし、実店舗では冷凍麺を使用しておらず、現時点では通常の店舗売上の方が依然として大きな割合を占めています。4月に新しい店舗をオープンする計画があり、そこは非常に狭いキッチンなので、冷凍麺を活用し、少人数で運営できるモデル店舗として、アンテナショップのようにしたいと考えています。キッチンカーと同じように、狭小スペースでも効率よく提供できる仕組みを確立することを目指しています。
冷凍することで伸びない麺の開発に成功したことで、これまで難しかったキッチンカーや社員食堂での導入、卸売りの展開が進み、今後さらなる成長の足がかりを築こうとしています。冷凍技術を活用すれば、ラーメンビジネスはまだまだ広がる可能性があり、業界に新たな風を吹き込んでくれるかもしれません。